少し前・・・といっても、内閣改造で金融担当相が更迭されるより

ずっと以前に、新聞の投書欄にとある女性からの意見を見かけた。



曰く、


政府・財界の一部で、金融操作によって意図的に物価を上昇させる

インフレ・ターゲットだとかいう政策が議論されているようだが、

私にはこれが全く理解できない。



雇用が保障されなくなり賃金もカットされ、多くの庶民は明日をも知れない

生活を強いられているというのに、なぜ物価を上げなければいけないのか。

世間一般の感覚を理解しない人達には退場してもらいたい。


少しでも世の中を理解しようとする意志のある人には、

この意見こそがとんでもない妄言であることが分かるだろう。





長い長い不況という紐の、伸びきった先端である今日においては

経済活動のあらゆる部分において、救いがたいほどのデフレーション

病魔のように進行している。



消費者にとって救世主にも思える「価格破壊」の旗手たちは

強硬な態度でサプライヤーに値下げを迫り、あるいは国内での

生産・調達をあっさり廃してその役割を海外に求めている。

モノやサービスが、これまでごく常識的に積み上げられてきた

原価と全く連続性のない、異常なまでの安価と引き換えに

下流へと流れていく。



消費されていく用役の量は殆ど変わらないのに、

経済全体は抗し難いほどの圧力で縮小させられようとしている。


賃金や雇用に不安定さが増したのは、モノが適正な対価で

やりとりされなくなったからだ。





自分の財布や通帳、家計簿の赤黒だけが世界の全てである人は

デフレが大口開けて自分達のメシを食い散らかしている姿を

永久に想像し得ない。