100%がテクニック
The Gospellersがその名も「アカペラ」という
完全アカペラアルバムをリリースするのですけど。
来月発売ということで、プロモーションのために
TVに出ずっぱりの彼らなのですが、とあるNHKの番組で
「僕らをアカペラ・グループだと思っている人も多いらしくて...」
とリーダー、村上氏が発言したのを見た。
確かに、これまでの作品を見てもゴスはむしろBoyzIIMenのような
ヴォーカル・グループだと形容する方が適当なのかもしれないけれど。
早稲田のアカペラ・サークルに端を発し「ひとり」のロングヒットで
紅白出場までもぎとった「現象」面をとらえるなら、世間一般には
「アカペラで食っている者」と見られて当然であって、今度のアルバムも
そういうネームバリューで売らんとしているわけだから、素直に
「ブームに乗っかってま〜す」って言っちゃっても
良かったんではないかと思った次第。
ゴスにとってアカペラは余技でしょ?
「ひとり」よりも、R&B色を前面に出した非アカペラ曲
「永遠に」の方がはるかにいい曲だと思えるもの。
アカペラはアカペラ屋さん達に任せておけばいいよ。
で、クラシックの現代曲という説明しにくいカテゴリーの中で
もがき続けている私に、あるアカペラ屋さんが
強烈なインパクトを与えてしまったのです。こないだ。
アメリカ・バークリー音楽院で88年に結成され、
97年に解散したアカペラ・バンド「VOX ONE」。
ここにmp3が置いてあります。
http://japan.artists.mp3s.com/artists/282/vox_one.html
説得力に溢れる演奏とはいえないけれども、それを補って余りある
ものすごくキレのあるハーモニーと、インプロビゼーションのきいた
各メンバーの巧みな歌いまわしと、斬新なアレンジ。
しかもリーダーは日本人(アルト:松岡由美子女史)だっていうじゃないですか。
なんで俺はこの音を体験していなかったんだ。恥だ。
でも、ここ10年くらい抱えっぱなしだった胸の中のもやもやに
答えが出たような気がしたのでした。このサウンドによって。
それは
「音楽は100%テクニックで構成される」
という確信です。
アマチュアの音楽家は「その気持ちになって表現すれば聴衆に伝わる」と
無邪気に信じているけれども、それは殆どのケースで思い込みに過ぎない。
こんなに強く念じているんだからきっと相手に伝わっただろう、
という錯覚・自己陶酔が、なんと多くの音公害を垂れ流してきたことか。
作品を完璧にアナリーゼしていることは前提として、その意図するものを
具現化するために「物理的に」どう演奏したらよいか、つまり
「自分の筋肉をどうコントロールしたらよいのか」を知っている者だけが
人前で音楽することを許されるのではないか。
もともと唯物論的なアプローチで物事にあたることが多いのですが、
VOX ONEの音はそんな私の背中を押したような気がします。
それが可能でない舞台の上にいるなら、別の小屋でも探しましょうか。
丸太集めてきて建てるってことも視野に入れてねー。