面会資格を「判定」される

娘が生まれた日の話を少し。
出産を終えたヨメと面会したICUを出るや否や「娘に面会できる」という連絡を受けたため、その足で別フロアの新生児病室*1へ向かった。保育器の中で眠る我が子を見て安堵することしきり。
担当医の先生から検査結果について聞いたあと、看護士さんからは入院手続き等に関する説明を受けた。なるほど、新生児科としては新たな患者が運び込まれたわけだからその保護者をそういったプロセスへ載っけるのは当然のことであろうが、私にとってみればさっきまで「大きなオナカ」であるに過ぎなかったものがいっちょまえに扱われようとしていることにちょっとした戸惑いがあった。それでもなんとか頭の中を整理して頷いた私に対し、「それでは、こちらの方から少しお聞きしたいことがあるのですが宜しいですか?」と看護士さん。
質問の内容は、ヨメの入院前からその日までの経緯を教えて下さい、というものだった。産婦人科から情報連携すれば済むことなんじゃないの?と訝ったが、まぁ当事者であるわけだし、理路整然とはいかないまでも通り一遍のこと*2は話した。質問者である看護士さんは特にメモをとるでもなく、少しひきしまった表情になって話を聞いた後「わかりました。それでは今日の面会はここまでということで...」と私を退室させた。
今思うにそれは「面接」だったのではないか。子供は母親のお腹から出てくるわけだから、その2者の関係は病院にとって自明だが、「父親」と自称する男性については身分証明を確認したわけでもなく、唯一の身元保証人である母親がICUから出られないでいる以上、乳児に害意を抱く人物でないと断定できる材料は何もないわけである。その病院でそれまでにそういった類の不幸な例があったのかどうかは知る由もないが、患者の健康に気を配るのが本業である看護スタッフが時に検察官や企業の採用担当者のような「人物眼」を駆使してまで命の安全を保障しようとする実態に触れ、改めて医療現場のシビアさに気付かされた次第。

*1:略称GCU。低体重で生まれたり免疫力が低い等なんらかのディスアドバンテージを抱える乳児が入院する部屋で、両親のみ面会(自分の子供に対する授乳や沐浴、おむつ替え等の指導を受けることができる)が許される。これが超未熟児などが入る新生児集中治療室(NICU)だと両親すら入室を許されずモニタ越しの面会となってしまうそうだ。

*2:もともとがややこしい妊婦であることに加えて転居まで絡んでいるから結構なボリュームとはなったが。