16小節毎に次々と


今でこそ合唱者である私だが、その昔はブラス者であった。



・・・あまりいい思い出ではないので、書けば書くほど

ダークな方向に進みそうだ。まぁ付き合え。



吹奏楽コンクールの課題曲は毎年書き下ろされる。

ブラバンという演奏形態が比較的新しいものなので

一般的な編成で適当な長さの曲を複数のジャンルで、という

条件を満たす曲を限られた過去のレパートリーの中から

選定するのは実際、困難だと思われる。



結果、表現がすっげー安直だったり、展開がやったら速かったり

とにかく音楽的に練れていない課題曲が多かった。

(マーチなんかには秀逸なものもありましたけど。たまに。)



そんなわけで、泣くほど練習した割にメロディだとかリズムが

全然記憶に残っていないのは、あえて思い出したくなるような

インパクトに欠けているからなのである。





そんな中、むしろ忘れたいのに脳味噌からこびりついて

離れない曲がある。

ある年に私の高校が選んだ、その課題曲のモチーフは



「太平洋戦争末期に東南アジアで敗走に敗走を重ねる日本軍」



というものだった。暗。



Andante tranquilloのファゴットによる旋律で始まる

その曲は、終始陰鬱なムードのなか





「ジャングルで空腹に耐えかねた日本兵達が自爆する手榴弾の音」

(ときどき入るパーカションの合いの手がそうらしい)



「日本軍の絶望的な行進」

(真ん中へんのalla marciaがそうらしい)



終戦を告げる原子爆弾

(最後のGongがそうらしい)





など、解説されんと分からんようなムリヤリな場面どもが

時間的な制約が厳しいコンクール課題曲という特殊な事情のもと



16小節毎に次々と繰り広げられる



とゆー、今考えると悪い冗談としか思えない曲であった。





県大会通過後の地方大会で、私の高校は銀賞という評価を頂いたのだが

金賞でなかった理由としてある審査員が挙げたのが

「課題曲における表現の消化不足」であった。

具体的に言うと「alla marciaのテンポ、速すぎ」ということらしい。



要するに、これは敗色濃い日本軍の『絶望的な』行進であるから

普通のマーチと違い、決して人が歩けないような遅めのテンポで

演奏するのが「正しかった」のである。





知っとったわ。そんなん。

自由曲が長めだったんで、タイムオーバーを恐れた先生が、



わざと急いだんだもの。







・・・コンクールって、何から何までほんっとに不条理。