マイラバを見届ける



音楽について、いわゆるヒットチャートにしか関心がない人には

Mr.Childrenには注目しても、MY LITTLE LOVERに対しては

「終わったアーティスト」だという認識だけが存在するのだろう。



95年の春、就職活動中のいち音大生に過ぎなかったAKKOが

音楽プロデューサー小林武史に見出され、ギタリスト藤井謙二との

ユニットMY LITTLE LOVERとしてシングル「Man & Woman」でデビュー。

8月にリリースした3枚目のシングル「Hello, Again 〜昔からある場所〜」が

メガヒット、12月リリースの1stアルバム『evergreen』は

発売後わずか1週間でミリオンを叩き出した。



もともと小林の頭の中には女性ヴォーカルをフィーチャーした

ポップ色の濃いユニットという構想があって、MY LITTLE LOVER

それを忠実に具現化したモノである。

当然、全てにおいて融通がきく。



『evergreen』はヒット・シングルを3曲を収録した

「お買い得CD」という売り方こそしているものの

その完成度たるや、とんでもないレベルである。

あるものをベストのカタチで創造しようとする人には、その世界にかかわる

全てのものが自分の思い通りにならなければならない。最初の1年間における

マイラバはまさにこの状態であると言うことができよう。



アルバム発表の前後小林とAKKOは結婚。その後AKKOは

出産まで経験してしまうことになった。しばしの活動休止。



98年にアルバムを立て続けに3枚リリースするが、通算2枚目となる

『PRESENTS』は小林の「オレの女、見んかい!」的オーラ炸裂の1枚であり

AKKOの大いなる変容(母になって、愛や恋へのたじろぎが少なくなった?)を除いては

あんまり見るべきところはないかも・・・などと考えていたら。



3枚目のアルバム『NEW ADVENTURE』にはビビった。

小林の「オレの引き出し、全部使ったるわい!」的大実験大会。

特に「ALICE」「Private eyes」「ANIMAL LIFE」等のパフォーマンスは圧巻。

音楽を聴き込む人にとっては突っ込みどころ満載の一枚となっている。





いっぽう同じ小林プロデュース下にあっても、ミスチルにはソングライターとしての

桜井和寿という個性が存在するわけで、「innocent world」前後から続いた

両者の蜜月はある時期を境に結局、途絶えた。

(97年末からの「無期限活動休止」は小林の影響を断ち切るために必要だった、との説もある)



つまり、小林武史という一人のキャラクターを通して見るなら、

ミスチルドロップアウト組であり、情熱の全てを自由に注ぎ込める対象として、

また自分の人生の結実としてMY LITTLE LOVERというユニットがある、と言える。



藤井が脱退することになり、夫婦ユニットとしての活動を余儀なくされたマイラバだが、

ますますフリーハンドとなった小林がさらなる深奥な世界を見せるのか、



それとも夫婦内輪受け寸劇ミュージックとなって

市場から黙殺
されるのか。



いずれにしても私は見届けたいと思う。