バカバカ酔い、そしてアナタも私もバカ?
- 作者: 平林直哉
- 出版社/メーカー: 青弓社
- 発売日: 2006/02/06
- メディア: 単行本
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- ここにもあそこにも、あんなバカこんなバカ、クラシックの世界にバカがいっぱい!
- クラシック批評の鬼が、一刀両断、100バカを斬る!
最初に眼を通したのは電車の中だったのだがホントにバカバカの連発で。やれやれ。
かなり悪意のこもったバカ呼ばわりだから読んでて物理的に気持ち悪くなってしまった。いちおう100個目のバカはご自分のことを書いておられるようだがバランスが取れてるとはお世辞にも言い難い。それにバカと結論付けた理由も又聞き、論理稚拙なものが多いし。まあ万人にお勧めできる本ではなかろう。
目次をかるーく抜粋してみると、
- NHKのバカ
- 絶対音感をありがたがるバカ
- 演奏中にプログラムをながめるバカ
- 演奏の途中にメモをとるバカ
- アイドル歌手をバカにするバカ
- 日本のオーケストラが欧米並みの技量だと吹聴するバカ
- ウィーン・フィルとベルリン・フィルが最高のオーケストラだと思っているバカ
- 演奏会でのバカ親子
- 子供に楽器を教えたがるバカ親
- 生演奏を聴こうとしないバカ
- イの一番に拍手したがるバカ
- バカのためにバカバカしいほど繰り返される、人をバカにしたアナウンス
てな具合で、これが100個。
ところで、これらの題材それぞれに「バカ共を斬る著者」「もっともだと頷く人々」「バカだと斬られた人々」という利害関係者が存在する訳だが、無理矢理100個に到達させるためか四方八方360度の斬り倒しで、いわゆるクラシック・ファンでこの著者に斬られる可能性の無い人はいないんじゃないかとまで思わせる。
私・・・をクラシックファンに入れていいかどうかわからないが、同意できるものもあり、ズバリ斬られてしまった箇所もあり、そして正直よくわからないものあり、といったところでして。
例えば、楽章と楽章の間での拍手は入れないのが普通(と知っているのが私)なのだが、クラシックのコンサートに慣れない人には未知のマナーだろう。ところがもっと進んでマニア(というよりはっきり言ってクラヲタ)の間では、「残響が完全に消えて初めて拍手を始めてよい。それが分からぬ奴はバカだ」とか「静かに終わる交響曲で、最後の静寂を打ち破るような拍手を盛大に鳴らし始めた奴がいたので、数人で囲んで恫喝してやった*1」とか、正直ついていけそうにない動きもあるようで。
かつて「国民的アイドル」であったモーニング娘。が今やモーヲタと称される人々以外から理解されなくなったように、いちおう世間から立派な文化だと看做されているクラシック音楽、そのディープな領域には、一般世間からとても受け入れられそうにない性質を抱えている、と敢えて言っちゃいます。何しろ、うかつに踏み込むと斬られちゃうおそれがありますから。よく勉強したいものですね。勿論、したくなければしなくてもよいのですけど。
*1:これは著者がそうした行為を肯定しているということではないので、念の為。